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武富士の債権譲渡の先は、アメリカの投資ファンドと... [債権譲渡]

武富士の条件緩和債権の譲渡(注1)の目的が、第三者からの資金調達で、資金提供者はアメリカの大手ファンドだと、週刊エコノミスト2010/2/2で報じられた。
投資適格未満への格下げで、金融保険会社のAMBACの保険の付いた証券化に早期償還が開始となり、譲渡されている担保債権1100億円ほどから上がる回収金全部が証券の償還原資に使われることになるという。毎月50億円、全体の10%以上の元利回収金が即時償還だけに使われてしまっては、他の営業のため資金繰りが起たなくなってしまう。全額償還モードを回避して、契約をリスケして、月次償還額を営業に重大な支障がでて破産しないよう少なくするために、一時償還金の150億円を求められ、そのための債権譲渡だったとされる。
 
和解債権の債権譲渡が証券化という見方をされた方(注2)も見られるが、そうではないだろう。
武富士トラストに買い取らせたローンに対して、ノンリコースのローンをファンドが出して、買い手会社の実質資本無しで、全部のリスクをとったのだろう。
通常では、信用リスクに応じた2~3割の超過担保を設定し、超過部分の権利は譲渡人が劣後権利として取得し、調達金利と回収金利の利ざやの持分を譲渡者が留保するが、全部の権利を売り切ったとみられる。
 
譲渡された和解債権とは、金利引きなおし後の債権でなければ、譲渡時に引きなおしの抗弁権が付着したままで、残高が確定できず、リスクが確定ができず、損失が不透明になるから、引きなおされた債権だけに限定されたのだろう。そうでなければ、表明保証、財務コビナンツや予定損害金条項を設けたところで 、売主信用がないので信用補填的目的は達せられない。
 
そして、和解債権の全部が原則、金利引きなおし後、36回払いの単純分割支払いの金利無し債権だとし(金利がついた和解債権が含まれないとする)、投資家がとるリスク=年複利利回り20%として割り引くき、投資額を145億円(注1)とすれば、和解債権元本額は194億円と逆算され、およそ簿価の半分、34%の超過担保となる。
投資家の求める利回りが25%であれば、引きなおし後の債権額が208億円あったことになる。
ここで信用リスクの根拠となる和解債権のパフォーマンスの実績値がないから、格付けしようがない。
 
こうして武富士は、いかなる権利も留保せずに、第三者に売り切ったことになる。
しかし、武富士トラストのリスク、すなわち投資家は、別に説明した法律上のリスクをかかえていることになる。 (注3)
 
 
 

債権譲渡と債務者対抗要件具備の実務上の矛盾 [債権譲渡]

 
 債務者対抗要件は、権利行使要件にすぎないか。
    ~武富士の債権譲渡取引をめぐり

 I. 事実

1.  武富士は、保有する消費者金融ローンで、条件緩和ローンを武富士トラスト合同会社に2009年12月14日に譲渡する、と12月11日の取締役会決議した。

2. 譲渡の対象となる債務者は、12月24日頃、封書にて、譲渡人、譲受人の連名の譲渡通知を受領した。

3. 債権額、弁済回数は、和解した内容と相違があった。


II. 推定される状況と事実2

4. 金額や支払い回数の認識時点について記載がないので、受領者は当然に、現時点のものと理解した。

5. 譲渡人に問い合わせたところ、10月末の債権額、返済条件であることが分かった。
  (それ以降に返済など取引が起こりえるし、再度の和解もありえ、債権は消滅の可能性もあるので、金額や返済回数が相違する結果となる。)


III. 民法467条1項の債権譲渡の債務者対抗要件

6. 通知は、無方式でよいので、口頭通知でよいことになる。
  とすれば、5の確認行為により、正しい債権内容の通知がなされたことになる。


IV. 対抗要件の構造と性質

7. 民法467条2項の第三者対抗要件の通知は、債権者間の優先関係、権利の移転、債権の帰属を確定するための権利関係に関する通知で、債務者の債権譲渡の第三者であるが、条文上、「債務者以外」の第三者を拘束する。1項通知に加え、確定日付けを求める。

8. 民法467条1項債務者対抗要件の通知は、譲受人の債務者に対する債権の行使を目的にする権利行使要件で、権利移転の効力、債権の帰属、その権利関係には無関係である。
  権利行使のためには、その時点での債権の確認が必要になるが、正当な請求行為のための要件という位置づけとされる。

9. 民法467条2項が実体上の権利関係を定めるに対して、民法467条1項通知は権利に関係せず、債務者が権利行使を阻止するための防御的な手続き要件に過ぎない。手続き要件を満たせば、権利行使を阻めない。


V. 金額、債権内容相違の場合の対応

9. 民法467条1項通知に、権利行使にあたり、金額相違、支払条件相違の記載が含まれていたら、債権の確認はできない。この場合、債務者対抗要件が具備されたとはいえず、異議を申し立てるなどして、権利行使が阻まれる。

10. 民法上は、電話での確認行為5により、要件を満たしたといえるが、貸金業債権では貸金業法24条2項通知が義務付けられるので、通知文全部について、文書による補正の確認行為が必要となる。記載内容が正しいと確認されるまで、支払いが阻まれる。

11. 通知は民法では譲渡人、貸金業法では譲受人に対して求められるので、譲渡行為があった時点での正確な債権内容の提示が両者に要求される。

12.  通知様式が規定される貸金業債権では特に、譲渡期日あるいは467条1項通知到着期日から、遡った期日の債権認識による通知は、467条1項通知が権利行使要件と理論構成されるのであれば、無効となる。それ以外の債権も厳格に解せば、民法要件を満たしていない。

13. 債務者が自ら認識している通知時点での債権内容を相手に積極的に知らせて、債務者対抗要件具備の「承諾」とみなされる行為をする義務はない。


VI. 譲渡期日と通知到着期日と、その間の取引と通知の内容

14. 譲渡契約成立日と通知到着期日が異なる場合の民法467条1項通知の債権の確認のための必要記載事項をどうするか。譲渡契約成立日時点での債権内容だと明記すれば、要件を満たすと考えられる。しかしながら債務者は、支払うにあたり、その後の取引を反映した現在の状態を示す義務を求めるだろうから、要件不備といえ、口頭により補正されたことになる。

15. 貸金業法では、みなし弁済の有効・無効が争点になりうるので、この場合、不完全通知ゆえ、貸金業法24条2項通知の要件を満たさない。


VII. 金額、支払い条件相違は、虚偽譲渡と推認される恐れ

16. 連名のよる譲渡通知といっても、譲渡人の実印が求められるわけではないので、譲受人が連名にて通知文を作成し通知すれば足りる。金額、支払い条件相違や計算期日が30日も前であれば、その情報を取得した債権者の誰かが、成りすまし譲渡、虚偽譲渡をしたのではないかと債務者には疑念が生じ、不安になる。実際に、譲渡者の信用不安な状況では、そうした事件は起こりうる。

17. この点でも、債務者は、権利行使時点での債権内容の確認ができていなければ、支払いを拒絶し、権利行使を阻止する正当な権利が認められる。

 

VIII.   債権譲渡の法構造に矛盾か 
 
18. 民法467条2項の要件は、1項通知に確定日を加えたにすぎない。(債権譲渡特例法による登記を除き)
   したがって、1項通知が不備であれば、2項通知の完全な有効性を認めてよいか。債務者から権利行使が阻まれるだけゆえ、誰が権利者かを確定する実体には関係がないから、単に抗弁権が付着した債権であるとして、2項通知を有効なものと認めることはできる。
 
19. 債権譲渡特例法による登記と4条2項の扱い
 債権譲渡特例法4条2項は、登記事項証明書の交付を受け、債務者対抗要件通知と共に送付すれば、債務者対抗要件を具備できると定める。このとき、登記事項の内容は、債権譲渡をした時点及びそれ以降のある日の時点の状況で、譲渡通知が送付到着した時点のものではない。譲渡からその数ヵ月後に通知された場合、債権内容は確認不能となるが、債権譲渡特例法は、権利行使の時点での債権内容が確認できようができまいが、譲渡時の債権で一致していれば不都合なく、債務者に不利益なく確認できたことになり、債務者には権利行使の阻止の抗弁を剥奪するという構成をとっており、同法に基づき、裁判上異議を受け付けられない。
 
20. しかしながら、民法上、1項通知が権利行使要件と位置づけら、それに基づき抗弁すれば、権利行使は阻まれうる。
 
21. 結果、債権譲渡特例法4条2項の債務者対抗要件の定めは、譲渡日以降に取引が発生しない債権にのみ適用となり、それ以外の債権については、適用とならないと考えられる。
 
22. この問題は、将来債権譲渡の債務者対抗要件で重大になる。将来債権の第三者間の対抗が金額不明で確定しうると構成しても、権利行使をしようとすれば、債務者の債権確認の抗弁を主張されうるから、登記事項証明では不備となる。
 
 
IX. 2重譲渡における第三者対抗と債務者対抗の衝突
 
23.設例
  Xは1月15日に、Y1, 2, 3, 4, 5....1000に対する貸付債権をAに譲渡し、速やかに債権譲渡特例法にしたがい、登記した。
  Aは、Xに譲渡誤もYに対する回収業務委託して、Yに譲渡通知をだすようにXに依頼せず、通知留保していた。
  Bは、同年6月15日、既にAに譲渡し登記されたYに対する同一の貸付債権を、Xから譲渡を受けた。
  Bは、譲渡後、速やかに債務者に対して通知し、直接回収を開始し、債務者は支払いに応じていた。Bはその後、債権譲渡登記した。
  Aは、XからのYからの回収金の送金がないことから、Y債権がBにも譲渡されたことを知り、7月15日、登記事項証明書それとも6月14日付の再建内容を記載した通知を債務者に送付した。
  債務者Yのなかには、債権譲渡の登記事項証明書から権利者がAであることを知り、Bに対して支払いを拒絶した者やBからの説明で準占有者のBへの有効な弁済を信じて。支払いを続けた者がいた。
  また別の債務者Yは、Aに対して債権内容の不一致で、支払いを拒絶した。
 
  YのBへの返済は、有効な返済であるか。
  Aは、債務者以外の第三者対抗要件具備を根拠に、正当に請求できるとしたとき、金額、弁済額、金利、支払い回数などどのように確認したらよいか。 
  Aの請求が金額不整合で支払い拒絶され、BがYからの回収を継続し続ける場合には、権利者であるAはBの不当な回収行為に対して、不当利得返還請求を求める他、解決策はないか。

武富士 債権譲渡と回収事務委託と譲受人の注意義務 [債権譲渡]

債権譲渡と回収事務委託と譲受人の注意義務

武富士の債権譲渡では、譲受人から振込み口座の変更通知が来ている。
譲受人は資本関係がない合同会社とあるにすぎない。
債権が譲渡され、譲受人が振込み口座変更を債務者に依頼し、同時に譲受人が譲渡人に回収業務委託をはかり、債務者が継続して譲渡人のATMからの返済できるとする。
どういう事態だろうか。

回収業務委託を受ける譲渡人は、譲渡口座の全部の返済をモニターできなければ、 2重請求になりかねない。
すなわち、譲受人への振込み状況もモニターできることを意味するから、振込口座の管理は、譲渡人によってなされるほかなくなる。
譲渡人が、譲受人に払い込まれた銀行振込を確認しようがないとすれば、譲渡した口座については、残高計算ができなくなってしまう。
他方、譲受人は、自分では、業務委託人の助けなくして、残高計算もできなくなる。

 回収事務の全部が譲渡人に委託される場合には、譲受人は自分で回収行為をしないため、正確な残高を知る業務上の動機がない。
こうして譲渡通知の残高計算基準日が、通知の50日前だろうと譲受人は支障を感じない。
その結果、50日前のローン情報、債務者情報が使われ、貸金業法24条2項通知が混乱を招く原因をつくる。
 
 回収事務を譲渡人に委託しないケースでは(別の第三者に委託する場合はありえる)、譲受人(の役員)は、受領したローン、債務者、口座情報に関して、請求事務ができる程度に正確である点いついて注意義務を負うが、そうしないと業務できないから、正確性を調査するはずである。しかし、譲渡人に回収事務の業務委託をはかる場合には、そうした調査義務も動機も起こらない。


譲受人の債権調査の注意義務

 この問題は、このような文脈のなかで、貸金業法は譲受人に、どの程度の注意義務を求めるかという問題に発展する。
すなわち、正確性がデータの計算基準日のずれによる以外に、残高や支払い情報が「でたらめな」という意味で間違えだらけであるとか、虚偽報告が含まれるかどうかに関して、譲受人は、譲渡人の債権データの正確性に関する表明保証について、どれだけ調査義務を負うか。
一件一件、取引履歴を調査して、残高確認するチェック作業を要するか。
存在しない債権を請求できないから、調査義務は当然であり、その作業を怠れば、架空債権の架空請求の紛争を招いてしまう。
調査は、譲渡人のコンピューターですれば容易なことゆえ、その確認作業業務は譲渡人に委ね、結果報告を読めばよいとすれば、全件について、履歴データからの調査義務があると考える。取得したデータ(計算集計を含めて)と譲渡人のデータベースのデータについての確認・照合も要すると考える。
営業譲渡において、通常業務であれば、そうした作業が、譲渡人の表明保証条項に依拠して、不要になるとは考える余地はない。

 証券化という譲渡では、2%を無作為抽出してサンプリング調査しかしていない。実際に営業譲渡を受けるとすれば、それでは業務トラブルを避けられるわけではなく、全権確認が当然である。

武富士 それとも 武富士トラストか --- どちらに支払うべきか [債権譲渡]

受領証明を出す武富士か武富士トラストか--どちらに支払うべきか

I. 武富士の回収事務の問題


1. 債務者対抗要件を具備した場合の貸金債権の譲渡で、回収事務受託できる権利能力は、サービサー法の指定で、認可を受けたサービサーに限定されませんか?

2.  それとも認可サービサーでなければならない対象債権の範囲は、貸金債権というだけではなく、紛争債権でしょうか?

3. 和解ずみの債権は、認可サービサー目的では紛争解決債権ではないですか?

4. もし認可のない違法サービサーによる違法な回収事務委託とされたときの結果は、債務者の弁済にはなんら影響がないでしょうか?

 

II. 武富士トラストの書面交付義務

5. 貸金業法242項は、厳格に読めば、取引のつど、毎回17条書面と18条書面の交付を求めていませんか。譲渡時に一度だけ、17条書面交付は、要件を満たすのか。

6. 上記5を満たさない場合に、債務者の支払いには何の影響もないですか。

7. 武富士が武富士トラストに変わって代行回収するというが、その後の譲渡後のトラストの242項書面交付も、事務委託を受けて業務するとすれば、武富士トラストの名で、代行として通知することになりますか。

8.  そういう7の方法によらず、武富士の従前どおりの18条通知が交付されても、債務者には不利益がないですか。

 

 III. 債務整理後の債権は、貸金業法適用を受けないとする法実務慣行

9. 債務整理され、和解した債権では、支払い前、支払い後の17条及び18条書面の交付を、弁護士・司法書士は求めていない。業者のみなし弁済の有効性の主張・立証にかかる要件だろうとの考えとみられる。金利のつかない和解債権に関係しないと考えるのだろう。業者には、交付義務がないと解されるか。

 

IV. 武富士に払い続けていたら、いったい誰に払っているのか。

9. 送金先口座を譲受人に変更せず、武富士に払っている場合、集金代行としての武富士に対する弁済なのか、それとも譲渡人に対して払っているのでしょういか。

この疑問は、武富士が回収金受領後でトラストに送金前に破産申請したとき、その金銭について、債務者は2重弁済リスクを負いませんか。

10. 譲渡通知の残高相違、支払い回数相違を理由に、民4682項により譲受人及び集金代行者に抗弁し、支払拒絶している間、他方、債務者には支払い義務があるから、譲受人の請求が正当でなければ、譲渡人に払うことになるのでしょうか。

11 上9の場合の間に、武富士が倒産申請したら、債務者は2重弁済のリスクを負いますか。

12.  サービサー法上、違法なサービサーと評価を受けて処罰あれれたとしても、武富士に対する弁済は、債務者の立場では、善意無過失であり、支払いは準占有者に対する弁済で有効だと主張できますか。

 

V. 法律助言者の責任

13.  法律助言者は、上記の一般的な法律問題について専門家としての注意を怠らず検討をしたうえで、助言しなければならないのは然りと考えます。そうした注意を怠った結果、誤った判断により、有効な弁済の否定、2重弁済リスクが生じたとき、注意義務違反の責めは負いませんか。

14. 注意義務は、現実に損害が発生したときに、上記の状況を判断したかどうかの立証になるでしょうか。

武富士の債権譲渡---民法債務者対抗要件具備通知と貸金業法通知 [債権譲渡]

武富士の債権譲渡にみる債務者の混乱から読む
債権譲渡通知と貸金業法24条2項通知

民法債務者対抗要件具備のための通知と貸金業法通知。債務者へのふたつの通知義務は、原因を異にするか、同じか。
ふたつの義務を譲渡人と譲受人の両名を送付人として一度に果たそうとしても、目的が異なれば、別々に要件を満たす必要が生じよう。
ふたつの債務者通知を有効にするための要件、効果は同じか否か。(注 武富士 それとも 武富士トラストか --- どちらに支払うべきか
ふたつの異種の通知を一度に済ます場合に、どういう問題が生じるだろうか。

 民法の譲渡通知に関し、債務者対抗要件の目的は、債務者に対抗したい場合にするのであって、債務者対抗要件が具備が目的である。その効果は、債務者からの権利行使の阻止抗弁を阻むに過ぎない。
債務者通知が、当事者間の譲渡(=権利移転)の効力には関係がない。
債務者に対抗したい当事者間の譲渡でなければ、通知が義務付けられているわけではない。実取引で債務者への通知のない譲渡は頻繁にみられる。
それに対して、貸金業法24条2項通知は、譲受人に対する義務規定で、同法通知を欠けば、請求が適法になされることができないことになる。ということは、民法通知があっても、貸金業法適用債権については、通知要件を満たさず、債務者が請求を拒める正当な抗弁理由となるか。
そして、譲受人が貸金登録業者でなくても、義務違反に対して監督機関の処分権限が及ぶと解される。

民法通知

 債権譲渡により、債務者への請求の正当性を主張しようとすれば、請求されるべき債権の存在が確認されなければならない。
したがって、発生原因を示すことは必要であり、金額が確定していたり、金利、延滞金利や弁済期日の定めがあれば、それらも通知されなければ、対抗要件不備となり、対抗される。民468条2項は、譲渡されるまでに生じた事由についての債務者保護規定をおいており、通知到達までに譲渡人との間で生じた取引があれば、抗弁できる。
すなわち、有効な通知のためには、債権の発生原因が必要となり、残高相違、支払い回数相違は、認められない。

 通知が権利行使要件である以上、債務者に対する支払い請求と密接に関係する。
権利の内容を確定しなければ、請求が対抗されるだけだ。
さらには債権特有な抗弁権や相殺などもある。

さて、Xは、m1月d1日現在及び将来において、債務者Yに対して有する債権(の全額)を、m2月d2日、Zに譲渡した、として、m1月d1日がm2月d2日の 50日前としよう。
その間に頻繁に取引がなされ、債権額が増減したり、消滅があるとする。また弁済期や金利が変更されることもある。
この民法上の対抗要件具備が有効といえるか。


貸金業法24条2項通知

 貸金業法24条2項通知のひとつの目的は、無方式の民法通知を補うためだろう。
同法17条書面の意味から、現在の債権の存在の証明であり、債権の確認を目的とし、事実上の請求に関連する行為である。
みなし弁済の抗弁付き債権である以上、残存債権額や支払い回数が相違は許されない。
また通知の交付(到達)日と債権識別基準日にずれがあれば、ローン債権の性格から、その間に取引が(リボ債権であれば頻繁に)行われるのは当然で、和解債権であっても返済がなされるから、50日前データでは、返済前で残高が大きく、支払い義務回数が1~2回多くなるのは、注意をしなくても当然に予見される。

 送付された債権譲渡通知は、和解された返済回数よりも多く、したがって当然返済金額もその分大きいという疑問が多くみられ、質問の問い合わせが大量になされているという。現在の債権額や返済回数と異なれば、架空請求と疑われても、正当な苦情だろう。
一部の司法書士ブログでは、「和解した内容よりも1回分多いという、いいかげんな内容で」「架空請求だと疑われても無理はない」というご指摘がなされている。
 譲渡されたのは条件変更債権ゆえ、一部の債権にはついて代理人が任命されており、和解交渉が終了して残高と返済方法がが確認された債権、あるいは途上にある債権も含まれるかもしれないが、12月14日に譲渡契約が成立した債権について、通知到達が12月24日で、50日以上前の10月末営業日の残高を送付することは、同法の業務目的を逸脱しており、無効である。

10万件もの口座について、残高や返済の相違が記載された通知の大量事務ミスは組織的になされるものである。


通知の必要記載事項

 貸金業法債務者通知により、民法の譲渡通知を兼ねることは許されても、貸金業法通知が請求のベースとなる債権額を絶対的必要記載事項とする以上、通知交付日に近い期日の正確な残高の記載が求められる。
その違法性を判断できる明確な規則がないが、いくら何でも、債務者に無用の混乱だけを招く結果となる通知交付日の一週間以上前の残高が、適法になされたと評価しうるだろうか。


通常の正常な譲渡業務を考えてみよう。

譲受人が譲渡人から、50日以上前のローン情報(残高、返済金額や返済期日の返済方法や満期など)及び債務者情報(氏名、住所、委任がある場合の代理人氏名、住所)しか受領していない場合はどうか。
これで請求業務ができるというのか? トラブルだけを招くことがわかっている情報だけであれば、手間が懸かってしまうことは明らかだ。通常の注意をもっていれば、最新データの作成を求め直すだろうから、業務をする上で、トラブルが起こらないと判断される程度の最新性が通知基準になるのではないか。法もそれ以上の注意まで求めようがない。
 貸金業法は、譲渡後の請求前に通知を要すると解され、24条2項通知が譲渡後、速やかに通知する義務がある。
実際の業務では、14日に譲渡契約が成立し、24日に通知が到達したとすれば、25日から業務を開始することができるよう準備されることになるだろう。14日べースの残高と返済条件を記すとしてもを、24日までに譲渡人との間で生じた取引については、譲受人に生じたと読み替えるという説明記載が必要となるだろう。


和解債権と債権譲渡による抗弁権の切断

 引きなおし計算がなされていない条件変更債権が譲渡されたとき、24条2項通知により、債権額について、裁判上、裁判外にしろ、確認の手続きをしなかった場合に、異議がなかったとして、譲渡後は、みなし弁済無効の主張の抗弁権が切断されるか。すなわち債務承認したと推定されるか。
 貸金業法は実体法ではない。行政取締法規として、24条2項通知は実体上の権利確定をするものではない。民法の譲渡通知では、抗弁権はそのまま移転する。貸金業法通知により、抗弁権放棄特約の成立まで推定されると考えるのは穏やかではない。


金融庁に文書回答制度を利用して問い合わせよう

 貸金業法24条2項通知の譲渡債権の認識基準日は、譲渡契約成立日からどこまでさかのぼってよいかなど上記の問題点に関して、疑問を持たれた債務整理代理人は、金融庁に、文書回答を求める制度を利用されることを勧める。質問も回答も公開されます。

参考ブログ記事
http://bscenter.txt-nifty.com/blog/2009/12/post-7e86.html
http://hanamizk.exblog.jp/11846636/
http://www.shihou.cc/blog/2009/12/25/2009/
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/debt/1261753262/
http://finance.nifty.com/cs/news/market/200912141621/1.htm
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/debt/1261753262/

本ブログ他関連記事
武富士、債権譲渡で司法書士の激怒と混乱(2009/12/31)
武富士 債権譲渡-- 条件緩和債権の譲渡(2009/12/31)


武富士、債権譲渡で司法書士の激怒と混乱 [債権譲渡]

武富士の条件変更債権の譲渡が債務者の間で混乱を招いているようだ。
譲渡の簿価が381億円ゆえ、一件50万円弱だとすれば、8万件ほどの多数に及び、確かに影響は多大だ。

混乱の憤りの原因は、債権の譲渡日と債権を認識するためのカット基準日が2ヶ月近く異なることにある。
譲渡日とは、当事者間の譲渡契約の成立日と考えられる。
実際に通知を受領した交付日の残高と債権認識のためのカット基準日の間で、支払いがあったり、その間に和解が成立していたら、通知文の残高と通知の交付当日残高では異なる。また残りの支払い回数も、その間に1~2回、支払われているため、通知文には、1~2回、多い回数と多い残高が記載される。
貸金債権は、日々、毎時間、毎秒、いつ借入れされ、返済があるかわからない。絶えず変動する残高。いつの時点での残高をとろうが、交付時点での譲渡額を通知することは、不能である。だから残高計算日の期日を決める必要があるが、認識日に過ぎない。

債権譲渡というものの様式を知らない債務者や司法書士のなかには、瑕疵がある通知、あるいはあちこちに誤りがある通知と考え、なかには架空の譲渡通知だとか、混乱を招いておられ、武富士に抗議をしたり、監督官庁への苦情に発展しているようだ。
和解交渉のための代理人の受任がなされている場合には、本人に通知されて迷惑を受けているという。

以下抗議文の司法書士サイトURL
http://bscenter.txt-nifty.com/blog/2009/12/post-7e86.html
http://hanamizk.exblog.jp/11846636/
http://www.shihou.cc/blog/2009/12/25/2009/


譲渡は、
譲渡日  平成21.12.14
譲渡債権額  平成21.10.30現在
債権管理回収事務受任者 武富士
和解年月日  
和解総額  xxx
和解残金 xxx

譲渡債権の認識するための債権カット基準日は10月末営業日のため、債務整理途上の債権が含まれており、譲渡の金額について、債務者の間で混乱を招いているようだ。

武富士 債権譲渡-- 条件緩和債権の譲渡 [債権譲渡]

武富士の条件緩和債権の譲渡に不明な点が多い。
取引の動機付け、からくりがわからない。

買い手は資本・人的関係のないLLC:武富士トラスト合同会社
①債権簿価:381億円(貸倒引当金148億円=簿価の39%)=233億円(簿価の61%)
②譲渡価額:145億円(他に譲渡者返還予約付き内部積立金25億円)
      (=簿価の38%, 引当金調整後62%)
③譲渡損失:88億円(=233-145)

以下の点が不明。
1. ①の381億円の条件緩和債権とは、金利引きなおし計算前の残高か?
2.①の148億円は、引きなおし後の減額されて残った債権額なのか?
 引きなおしされていない和解債権が含まれるか。 
3. ①には債権が存在する以上、過払い金債権が入っていないとみられる。入っていたらその口座の債権額ゼロになるだけ。
4. 金利引きなおし後、すなわち債務整理後の残高が233億円であれば、その62%の譲渡価額になるが、どのように更なる貸し倒れを見積もったか。過去実績か。
5. 新規調達額②の145億円+②の25億円=170億円はどこから捻出したか。

引きなおしされていない債権が含まれているとしたら、譲渡により債務者の任意弁済無効の抗弁権は切断されていないので、後で、減額される恐れが残る。これでは一体、いくら残高があるか不明であり、価格を外から推測しようがない。

 譲受人は証券化して、それとも外部資金で調達したのでしょうか。そんなファンドをつける先があるとして、利回り10%未満ではありえないでしょう。また外部資金だとしたら、価額の確率的妥当性をどのように証明できたでしょうか。したがって内部での貸付と考える他ないでしょう。

回収の銀行口座は、買い手になっているとみられる。
武富士を経由していないようですから、完全に帰属を移したのか。
25億円の預託金は、何のために必要となった運転資金でしょうか。回収事務(委託)費用でしょうか。
しかしながら、武富士のATMで返済したときの譲渡に関する通知文には、武富士に委託されたとある。

譲渡のカット日が10月末営業日で、その期日を計算日として、残高通知されている。
12月14日が債権譲渡契約の成立の譲渡日だとすれば、カット日で残高を計算したとすれば、和解成立前の金額、引きなおし計算前金額であったり、既にカット日から譲渡日の間に支払われていたり、その場合には残高も異なるとしたら、譲渡価額はどのように決定されたのか。

既に1年後に起こりうる破産処理の方法を見るようです。
破産処理であれば、資産処分するとして、かなり経済的に見合う取引のようにみえますが。

参考

http://www.takefuji.co.jp/corp/nwrs/detail/091214.pdf


貸金業法24条2項の通知義務は強行法規でないのか [債権譲渡]

貸金業法24条2項の通知義務は強行法規でないのか

利息制限法の適用を受ける金融機関が貸金業法の適用となる貸金債権を譲り受る場合に、貸金業法24条2項の17条や18条の書面不交付は許されるか。信託目的に限定されてか、通知不交付には、違法性がないとの立場を前提にした法律見解があります。ただ記事は、書面不交付の違法性には焦点をおかれておらず、争点としていない。
http://financelaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/sfcg3-2-ba09.html
貸金業法の適用となる貸金債権の譲渡について、法24条2項が強行法規とはいえず、任意規定との立場から、不交付を正当と認められるか。

民法の債務者への譲渡通知は、債務者に譲渡を対抗したいかどうかで、債務者対抗を(通知がない限り、あるいは通知があるまで)あきらめれば、債務者通知は任意と考えられる。他方、貸金業法24条2項通知については、起草者や議会意思は 定かではないが、その法目的は、みなし弁済の有効性に関連してくるところで、譲渡後の請求にあたり、実際には、債権額の確認・確定作業、請求債権の 条項・条件の内容確認が必要になることに関連する。

貸金業法が実体権を変動させるものでなく、行政取締規定だとしても、もし法24条2項通知を交付すれば、その効果として、何が起こるか。
① 譲受人が金融機関であれば、請求可能な金利は利息制限法に従うことになり、15%超過金利を請求したり及び受領する権利は制限され、請求行為は禁じられる。
② 通知行為は、実体上、債権額確認行為ではなく、その合意形成過程でもない。通知があっても、債権額確認の債務承諾があったとはみなされず、債務者は抗弁権が放棄されたとはみなされず、将来において、金利引きなおし計算による 元本減額請求は放棄されていない。(譲渡前に過払い金請求権が生じている場合には、借り手にとって、貸し手に対する債務は消滅しており、債権不存在ゆえ、譲渡の対象物がなくなるので、理論上「債権」譲渡は無効になる。)

金融機関にとり、利息制限法の適用とは何を意味するか。債権譲渡を受けるにあたり、譲渡元本が、みなし弁済が有効になされたと仮定あるいは想定された元本残高であることは、譲受人によって認識されており、引きなおし計算されてはいない。金融機関は、譲渡により15%の上限金利の制約を受けた上で、みなし弁済無効の抗弁が付着したままの債権を、(抗弁がない限り)債権が存在するものとして請求することは許されることになる。いつ何時、みなし弁済無効の主張がなされるとも知れず、債権額は確定していない。利息制限法適用を受ける銀行は、引きなおししないまま、みなし弁済有効を前提とした債務の存在を前提にして、請求することが許されるか。サービサーであれば、超過金利請求は禁じられるが、引きなおし計算義務までないように解される。
法目的は不明だが、24条2項通知不交付義務が強行法規でないとしたら、その違反は、どういう場合なのかの裁判規範は定かではない。

明らかなことは24条2項通知していれば、15%を超えて請求できない。対内関係において権利を移転した上で、債務者通知しなければ、譲渡人の有する権利として債務者に請求し、譲渡人が取得し、譲渡人に帰属する金銭に対して、譲受人は、内部関係において、受益権に変質させることで、優先的参加持分で金利全額に対して優先請求できる権利を有していると考えられる。15%以上の受領権限を取得するには、 24条2項通知を不交付にしたまま、かつ譲渡者に回収委任を専管的に委ねる必要がある。

実体法上、債務者通知がなければ、債務者に対しては譲渡は対抗できず、債務者との関係で、譲渡は効力を有しない。したがって、譲受人による請求権の効力は認められない。上記記事では、貸金業法上、譲渡契約が有効に成立していても、債務者通知が交付されていなければ、債務者に対しては利息制限法を越える金利の請求をすることは許されることを前提にする。法24条2項は公序にはあたらず、強行法規ではないとの理解に基づく。通知が不交付であれば、譲渡人は利息制限法超過金利を正当に請求する契約上の権利を有するから、譲受人が債務者に譲渡を対抗できずとも、利息制限法超過金利の全部を取得する権利は確保される。貸金業法は、そうした内部関係における権利変動、パーティシペーションについて立場を明白にしておらず、記事の論者のような法律意見を主張がありえる。

24条2項通知不交付が許可されれば、金融機関に対して違法金利を事実上請求し、収受する正当な権利を与えることになる。本来、債権譲渡があれば、それを実現することは公序に反し、無効である。したがって、貸金債権については、権利関係に変動があれば、24条2項通知不交付により、保護されるべき債務者の権利が侵害されるので、譲渡がなかったとみなされる。金融機関に利息制限法を超過する金利を違法なからくりで払わされることを社会的に容認する潜脱的な仕組みが許されるか。日本振興銀行は、そうした偽装を公共政策条認められないという立場をとっており、それを防止するための規定が24条2項通知交付義務だとして強行法規と考える。したがって、日本振興銀行は貸金業法の制約から、貸金債権については、パーティぺーション的権利譲渡であり、債権それ自体の譲渡がなかったものと理解する。すなわち、譲渡はなかったのであり、債権譲渡登記の目的は、表示は何としても、内部当事者間でのみ有効なパーティシペーションの権利確保であり、譲渡はなかったと主張されているのではないか。
ゆえに、信託銀行と争われる振興銀行の権利が優先すると解かれることになる。
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