債権譲渡と債務者対抗要件具備の実務上の矛盾 [債権譲渡]

 
 債務者対抗要件は、権利行使要件にすぎないか。
    ~武富士の債権譲渡取引をめぐり

 I. 事実

1.  武富士は、保有する消費者金融ローンで、条件緩和ローンを武富士トラスト合同会社に2009年12月14日に譲渡する、と12月11日の取締役会決議した。

2. 譲渡の対象となる債務者は、12月24日頃、封書にて、譲渡人、譲受人の連名の譲渡通知を受領した。

3. 債権額、弁済回数は、和解した内容と相違があった。


II. 推定される状況と事実2

4. 金額や支払い回数の認識時点について記載がないので、受領者は当然に、現時点のものと理解した。

5. 譲渡人に問い合わせたところ、10月末の債権額、返済条件であることが分かった。
  (それ以降に返済など取引が起こりえるし、再度の和解もありえ、債権は消滅の可能性もあるので、金額や返済回数が相違する結果となる。)


III. 民法467条1項の債権譲渡の債務者対抗要件

6. 通知は、無方式でよいので、口頭通知でよいことになる。
  とすれば、5の確認行為により、正しい債権内容の通知がなされたことになる。


IV. 対抗要件の構造と性質

7. 民法467条2項の第三者対抗要件の通知は、債権者間の優先関係、権利の移転、債権の帰属を確定するための権利関係に関する通知で、債務者の債権譲渡の第三者であるが、条文上、「債務者以外」の第三者を拘束する。1項通知に加え、確定日付けを求める。

8. 民法467条1項債務者対抗要件の通知は、譲受人の債務者に対する債権の行使を目的にする権利行使要件で、権利移転の効力、債権の帰属、その権利関係には無関係である。
  権利行使のためには、その時点での債権の確認が必要になるが、正当な請求行為のための要件という位置づけとされる。

9. 民法467条2項が実体上の権利関係を定めるに対して、民法467条1項通知は権利に関係せず、債務者が権利行使を阻止するための防御的な手続き要件に過ぎない。手続き要件を満たせば、権利行使を阻めない。


V. 金額、債権内容相違の場合の対応

9. 民法467条1項通知に、権利行使にあたり、金額相違、支払条件相違の記載が含まれていたら、債権の確認はできない。この場合、債務者対抗要件が具備されたとはいえず、異議を申し立てるなどして、権利行使が阻まれる。

10. 民法上は、電話での確認行為5により、要件を満たしたといえるが、貸金業債権では貸金業法24条2項通知が義務付けられるので、通知文全部について、文書による補正の確認行為が必要となる。記載内容が正しいと確認されるまで、支払いが阻まれる。

11. 通知は民法では譲渡人、貸金業法では譲受人に対して求められるので、譲渡行為があった時点での正確な債権内容の提示が両者に要求される。

12.  通知様式が規定される貸金業債権では特に、譲渡期日あるいは467条1項通知到着期日から、遡った期日の債権認識による通知は、467条1項通知が権利行使要件と理論構成されるのであれば、無効となる。それ以外の債権も厳格に解せば、民法要件を満たしていない。

13. 債務者が自ら認識している通知時点での債権内容を相手に積極的に知らせて、債務者対抗要件具備の「承諾」とみなされる行為をする義務はない。


VI. 譲渡期日と通知到着期日と、その間の取引と通知の内容

14. 譲渡契約成立日と通知到着期日が異なる場合の民法467条1項通知の債権の確認のための必要記載事項をどうするか。譲渡契約成立日時点での債権内容だと明記すれば、要件を満たすと考えられる。しかしながら債務者は、支払うにあたり、その後の取引を反映した現在の状態を示す義務を求めるだろうから、要件不備といえ、口頭により補正されたことになる。

15. 貸金業法では、みなし弁済の有効・無効が争点になりうるので、この場合、不完全通知ゆえ、貸金業法24条2項通知の要件を満たさない。


VII. 金額、支払い条件相違は、虚偽譲渡と推認される恐れ

16. 連名のよる譲渡通知といっても、譲渡人の実印が求められるわけではないので、譲受人が連名にて通知文を作成し通知すれば足りる。金額、支払い条件相違や計算期日が30日も前であれば、その情報を取得した債権者の誰かが、成りすまし譲渡、虚偽譲渡をしたのではないかと債務者には疑念が生じ、不安になる。実際に、譲渡者の信用不安な状況では、そうした事件は起こりうる。

17. この点でも、債務者は、権利行使時点での債権内容の確認ができていなければ、支払いを拒絶し、権利行使を阻止する正当な権利が認められる。

 

VIII.   債権譲渡の法構造に矛盾か 
 
18. 民法467条2項の要件は、1項通知に確定日を加えたにすぎない。(債権譲渡特例法による登記を除き)
   したがって、1項通知が不備であれば、2項通知の完全な有効性を認めてよいか。債務者から権利行使が阻まれるだけゆえ、誰が権利者かを確定する実体には関係がないから、単に抗弁権が付着した債権であるとして、2項通知を有効なものと認めることはできる。
 
19. 債権譲渡特例法による登記と4条2項の扱い
 債権譲渡特例法4条2項は、登記事項証明書の交付を受け、債務者対抗要件通知と共に送付すれば、債務者対抗要件を具備できると定める。このとき、登記事項の内容は、債権譲渡をした時点及びそれ以降のある日の時点の状況で、譲渡通知が送付到着した時点のものではない。譲渡からその数ヵ月後に通知された場合、債権内容は確認不能となるが、債権譲渡特例法は、権利行使の時点での債権内容が確認できようができまいが、譲渡時の債権で一致していれば不都合なく、債務者に不利益なく確認できたことになり、債務者には権利行使の阻止の抗弁を剥奪するという構成をとっており、同法に基づき、裁判上異議を受け付けられない。
 
20. しかしながら、民法上、1項通知が権利行使要件と位置づけら、それに基づき抗弁すれば、権利行使は阻まれうる。
 
21. 結果、債権譲渡特例法4条2項の債務者対抗要件の定めは、譲渡日以降に取引が発生しない債権にのみ適用となり、それ以外の債権については、適用とならないと考えられる。
 
22. この問題は、将来債権譲渡の債務者対抗要件で重大になる。将来債権の第三者間の対抗が金額不明で確定しうると構成しても、権利行使をしようとすれば、債務者の債権確認の抗弁を主張されうるから、登記事項証明では不備となる。
 
 
IX. 2重譲渡における第三者対抗と債務者対抗の衝突
 
23.設例
  Xは1月15日に、Y1, 2, 3, 4, 5....1000に対する貸付債権をAに譲渡し、速やかに債権譲渡特例法にしたがい、登記した。
  Aは、Xに譲渡誤もYに対する回収業務委託して、Yに譲渡通知をだすようにXに依頼せず、通知留保していた。
  Bは、同年6月15日、既にAに譲渡し登記されたYに対する同一の貸付債権を、Xから譲渡を受けた。
  Bは、譲渡後、速やかに債務者に対して通知し、直接回収を開始し、債務者は支払いに応じていた。Bはその後、債権譲渡登記した。
  Aは、XからのYからの回収金の送金がないことから、Y債権がBにも譲渡されたことを知り、7月15日、登記事項証明書それとも6月14日付の再建内容を記載した通知を債務者に送付した。
  債務者Yのなかには、債権譲渡の登記事項証明書から権利者がAであることを知り、Bに対して支払いを拒絶した者やBからの説明で準占有者のBへの有効な弁済を信じて。支払いを続けた者がいた。
  また別の債務者Yは、Aに対して債権内容の不一致で、支払いを拒絶した。
 
  YのBへの返済は、有効な返済であるか。
  Aは、債務者以外の第三者対抗要件具備を根拠に、正当に請求できるとしたとき、金額、弁済額、金利、支払い回数などどのように確認したらよいか。 
  Aの請求が金額不整合で支払い拒絶され、BがYからの回収を継続し続ける場合には、権利者であるAはBの不当な回収行為に対して、不当利得返還請求を求める他、解決策はないか。

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MATO


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ちょっとは行動してみる気、ある?
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by MATO (2011-04-02 00:10) 

ろぶすたー☆


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ぶっちゃけ上手くないんだけど、そのぎこちなさがむしろ(・∀・)イイ!!

スマタもしてくれけど、途中から普通にち○こ突っ込んでた件wwwww
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by ろぶすたー☆ (2011-04-10 07:12) 

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