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総量規制後の債務者と貸金業者の行動パターン [貸金債権]


総量規制に事務対応のため、信販会社は09年の後半頃から、利息制限法金利以内で営業する消費者金融会社は11月頃から、所得証明の提供をもとめているようですが。
入手できたのは、3割だとか。
出したら借入れ総額で1/3以下にされるのですから、誰とて不利益を被るだけの証明を出す理由はないでしょう。法律が提出を義務付けているわけではない。

7割が収入証明を出さない。この数字は、NTTデータ調査の7割に貸付ができない状況(本ブログ他の記事)になると同じ位だ。


全体借入れが収入の1/3を超えていたら、どのような処理になるのだろうか。
A=30万, B=110万, C=90万の3社からの230万円の借入れがある年収360万円の債務者としよう。
借入れ総額が120万円に減少するまで、誰も貸すことができない禁止客となるから、リボ、利用枠は停止される。

Bは、11万円を早急に回収して元本を100万円以下にして、金利を18%請求する行動に出るだろう。
Cは、利息さえ返してもらえば、年収がわかっているからといって、残高を50万円以下に減少させる義務はないので、信用が安定していれば、元本回収に熱心でなくなるだろう。元本を回収してしまったら、利益を生む資産が減るだけで、追加して貸し出すことが禁止口座であるから。 
Aも同様で、年収1/3にするには、全体で80万円の減額が必要だが、自分から減らすことはないだろう。減らしても、貸せなくなり、客を失う結果になるだけ。

そうすると、客も追加して借入れができないことを知っていれば、元本を返さない。
したがって、この客は、Bの10万円だけを返して、あとは、月220万x18%÷12=3.3万円を払い続けるのが最善の選択になる。


総量規制 ---国の定めた返済能力ある信用力という尺度 [貸金債権]

国が法律で定めた信用ある返済能力基準とは、どういう基準か


 一体、支払い可能で健全な債務額について、年収1/3の総量規制は、どこに計算根拠があるのだろうか。
起草のための貸金業懇談会の資料や立法での検討事項には、合理性基準が示されていない。
誰が提案し、誰が賛成し、反対があったかもわからない。

A=30万, B=70万, C=90万の3社からの190万円の借入れがある年収360万円の債務者としよう。
借入れ総額が120万円に減少するまで、誰も貸すことができない禁止客となるから、リボ、利用枠は停止される。

3年をめどに完済されなければならないとしよう。
月の支払いは、元本190万円x2.8%=53200円を払えば、36ヶ月目には既存のローン残高はゼロになる。
月収30万円に対して18%、手取り26万円では20%が借金返済に充てられることになる。

これが120万円に減ったらどうなるか。3年完済予定払いを変えないとすれば、月2.8%は変わらず、33600円へと返済額が減少するだけとなる。
月収30万円に対して11%、手取り26万円では13%が借金返済に充てられることになる。

すなわち、政府と議会は、収入の13%以上の返済は、信用問題があると決定した。
返済不能となる合理的根拠は、議員、金融庁起草担当者、懇談会の慶応大学の経済学者2名のメンバーに聞いて見たいところだ。


無論これ以外に 、住宅ローンや自動車ローンなどが担保付借金がある場合があるだろう。その場合には、確かに信用に影響が出るだろう。
アメリカでは、住宅ローン返済が困難になって差し押さえが迫る債務者に対して、返済を支払い可能額にまで減額して支払い猶予を与える政府の計画 HAMP(Home Affordable Mortgage Program) が進められており、昨年終りに、65万人が利用したという。
その返済きる額への支払額調整基準は、収入の31%とされている。
基準というのは、負債総額ではなく、収入に対してどれだけの負担があるかを測る尺度を使うのが、合理的基準というものだが、学者と議員と金融庁は、どういう理由を考えたのだろうか。

     元本残高     利払い     月支払額
経過月数          1.50%      2.80%
0    1,900,000             53,200
1    1,846,800    28,500    24,700
2    1,793,600    27,702    25,498
3    1,740,400    26,904    26,296
4    1,687,200    26,106    27,094
5    1,634,000    25,308    27,892
6    1,580,800    24,510    28,690
7    1,527,600    23,712    29,488
8    1,474,400    22,914    30,286
9    1,421,200    22,116    31,084
10    1,368,000    21,318    31,882
11    1,314,800    20,520    32,680
12    1,261,600    19,722    33,478
13    1,208,400    18,924    34,276
14    1,155,200    18,126    35,074
15    1,102,000    17,328    35,872
16    1,048,800    16,530    36,670
17     995,600    15,732    37,468
18     942,400    14,934    38,266
19     889,200    14,136    39,064
20     836,000    13,338    39,862
21     782,800    12,540    40,660
22     729,600    11,742    41,458
23     676,400    10,944    42,256
24     623,200    10,146    43,054
25     570,000    9,348    43,852
26     516,800    8,550    44,650
27     463,600    7,752    45,448
28     410,400    6,954    46,246
29     357,200    6,156    47,044
30     304,000    5,358    47,842
31     250,800    4,560    48,640
32     197,600    3,762    49,438
33     144,400    2,964    50,236
34      91,200    2,166    51,034
35      38,000    1,368    51,832
36          0      570    52,630



      元本残高    利払い     月支払額
経過月数          1.50%    2.80%
0    1,200,000             33,600
1    1,166,400    18,000    15,600
2    1,132,800    17,496    16,104
3    1,099,200    16,992    16,608
4    1,065,600    16,488    17,112
5    1,032,000    15,984    17,616
6     998,400    15,480    18,120
7     964,800    14,976    18,624
8     931,200    14,472    19,128
9     897,600    13,968    19,632
10     864,000    13,464    20,136
11     830,400    12,960    20,640
12     796,800    12,456    21,144
13     763,200    11,952    21,648
14     729,600    11,448    22,152
15     696,000    10,944    22,656
16     662,400    10,440    23,160
17     628,800    9,936    23,664
18     595,200    9,432    24,168
19     561,600    8,928    24,672
20     528,000    8,424    25,176
21     494,400    7,920    25,680
22     460,800    7,416    26,184
23     427,200    6,912    26,688
24     393,600    6,408    27,192
25     360,000    5,904    27,696
26     326,400    5,400    28,200
27     292,800    4,896    28,704
28     259,200    4,392    29,208
29     225,600    3,888    29,712
30     192,000    3,384    30,216
31     158,400    2,880    30,720
32     124,800    2,376    31,224
33      91,200    1,872    31,728
34      57,600    1,368    32,232
35      24,000    864    32,736
36          0    360    33,240


年収1/3超過の借入れと既に飽和して縮小を始めていた貸金市場 [貸金債権]

年収の1/3超過負債を負う債務者の債務弁済デフォルト率に関連して


2005年には飽和していた貸金市場

1990年代に消費者金融といえば、信用調査することなく、本人確認ができて在職証明さえできれば、即刻30分で、50万円の与信枠上限の範囲で貸し付けられるのがビジネスモデルだった。その結果、大久保権八が語るように、7~8社から借り入れをつまむのはふつうに見られた光景だった。それが2000年前後頃から、プロミス、アコム、アイフル、三洋信販らは、100万円超過の貸付モデルに変容していき、方針変更はたちまちデータに現れ、2000年代初めには、貸付の1/3以上が100万円以上の貸付にシフトしていった。

背景は、2000年6月の40%から29%への金利の引き下げにあったとみられる。ローンあたりの収益性が減る。営業収益ベースで1/4以上の減少で、経常利益ベースで考えれば、大手業者を除けば、1/10以下になったとみられる。中堅業者の多くが統廃合されるか、破産を選択した。大手であっても、利益は半減から1/3になった。

収益源を補う経営戦略として、口座数を増やすか、それともローン単価を大きくするかのいずれかの戦略になる。口座数は1400万件。90年代になって上場が認められ、資金を得た大手業者は、その頃に導入した無人契約機を、2000年には、全国津々浦々まで、張り巡らすことができた。消費者金融への新規口座は、飽和していた。

出店するさい、獲物が何匹獲られるか、各社人口動態調査を怠らない。人口30~40万の地方都市に、大手、中堅が有人店を出す。利用者と予備軍あわせて4~5万が最大のところに、大手で20億円、中堅で10億円の融資量を有する。大手で顧客数目標は完済口座を入れて1万件。中堅はその半分。互いに客を奪い合うが、利用者の半数が4~8件を使って重なり合う。もうどこにも新規客がいない。20歳以上となる人口は、供給自体が少子化で少なくなっていく。

2000年には、そんな地方都市では、もはや常習客すら見つけられない状況となっていた。降雨量上限は、2000年に40mmから29mmに規制されてしまった。砂漠では日に数匹しか出会えないウサギを探し求めるライオンと狼がうろうろする。獲物を見つけたら、太らせて食らうのが効率的だ。獲物の数が取れなければ、単価を上げるほか利益性を上げる方法はない。新たな確保できる獲物の数が限られただけではない。

こうして大手業者は、50万円を100万円に、そして200万円に上げていった。ブロイラーの鶏は、大きくするにも危険を伴い、限度がある。200万円以上の領域には、利息制限法適用で営業するオリックス・クレジットなど異種の獲物を狙う、別の獣が住んでおり、店舗がなくても業務ができる、ネット時代になっていた。

大手3社と他は、100~200万円の間の領域に出て行った。武富士だけは、100万円上限を選択した。しかしなぜかローン単価は、武富士が65万円で、貸付の1/3以上が100万円を超える他は55万円だった。武富士では多くが90万円以上に張り付いた。大手と中堅。アイフルは当初、単価で出遅れたが、5万円の差が、収益の差になるから追随し、同じほどの貸付単価となる。店舗の規模の違いは、一人当たりの単価の差となって現れる。

2001年以降、口座と口座あたりの収益性を維持できない数多くの業者が倒産か統廃合され、しだいに数を減らしていく。ライフ、アエル、クレディア... 合併、統合では、ディック、そして三洋信販までもが。

鳥取砂丘の向こう側の米子や松江、長崎や佐世保、佐賀に、どれだけの潜在客がいるというのか。潜在客がいなければ、業者は自然と引けていく。
いくらなんでも、同じリスクファクターであれば、信用評価上、年収の30%までしか貸せず、1年以内の貸倒リスクが高くなるような客に、年収の5割を無理して貸すことはない。
http://forconsumers.blog.so-net.ne.jp/2010-01-02「年収の1/3超過負債を負う債務者の債務弁済デフォルト率って、どういう意味があるか」) 
獲得した獲物数だけで限られ、新規が生まれてこない以上、200万円まで貸せる既存客には貸し込み、市場は飽和し、出口がなかった。

2005年には、完全に飽和しており、自然縮小に向かっていた業界に、2006年以降、司法が止めをさし続けた。

年収の1/3超過の負債を負う債務者のデフォルト率って、どういう意味があるか。 [貸金債権]

年収の1/3超過負債を負う債務者の債務弁済デフォルト率と、貸付方針に関する立法関係者らの誤解

この質問は、「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第一回事務局会議(平成21年11月30日)で司法書士が、尋ねた質問である。
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/gaiyou/20091130.html

借入れする個人は、最初からすぐに年収の1/3を借りるわけでもなく、借りられるわけでもない。
負債総額が年収の1/3に達したときを起点として、収益とリスク(初期延滞客、常習的頻繁繰り返し延滞客、長期延滞客、貸倒客)のパフォーマンスを計測してみたら、1/3以下の客のパフォーマンスと比べて、悪いだろうという質問の意味だろう。返済ができなくなる確率が上がるのは当然のことだろう。所与の条件がおなじであればの話だが。

しかしリスクを決定する因子は、負債の大きさ、年収比率だけではない。住居形態(費用負担がいるかどうか。必要な場合の家賃)、それを決定する家族構成(親と同居か、別居か、既婚か、子供がいるか、何人いるか。)、収入の大きさ(比率が同じでも300万円と600万円の所得では支払い余力は違う)などによって、影響される。職種、職歴年数も与信審査には影響を与える。
業者は与信審査で、年収の6割までも融資枠を認めることがあるだろう。しかし住居費用がいらず、子がいない場合と、中学生2人に賃貸住まいでは、支払能力は全く違う。年収400万円、小学生と園児の二人の賃貸住宅の既婚者に、借入れ総額で160万円まで貸していても、200万円を超えて貸すかどうか。しかし子がおらず、家賃が懸からなければ、貸すだろう。

リスク要因の違う債務者には異なる与信対策がとられる。リスクがあれば、融資するか否か、融資しても融資額の絞り方、出金停止をどうとるか。だから、年収の1/3を超える債務者といっても、他の要因から同じリスクではないのだから、デフォルト率が悪いだろうと推測することはできない。年収1/3超えのリスクは、他の要因を満たせばカバーされるし、業者の専門性は、それを管理する技術にある。

業者にとって年収1/3が最重要の決定要因ではない。それを政府が国が、他の要因を無視して、最重要要因にしてしまったにすぎない。
確かに同じ債務者が同じ経済状況で、年収30%の借入れが、経済的条件を変えず、40%を越えたらデフォルト・リスクが増大することは明らかである。しかしそういう単純な話ではない。
 デフォルトの決定的因子とはなにか。

そうしたデフォルト率を抑えられる管理・制御可能な因子に比べ、人的能力では予測不能な因子がある。失業、離婚、家族の病気。ただある程度は、過去の履歴から、転職回数や職歴からリスクの大きさは判断がつく。職種では、失職のない公務員か否かは、大きな決定因子ともいわれる。デフォルト率は、年収1/3以下かどうかの要因よりも、むしろイベント期日の到来の予測がつかない失職や病気などのライフイベントの方が、大きな要因であり、年収1/3以下と超過の債務者が同じ経済信用因子でないので、違う種のひとを比べるのは、スコアリング分析データをださせないと意味がないだろう。

貸してから1年以内に倒れることがわかるような貸せない客には、貸せない。こうして年収1/3を超えても、個別与信要因からは、すぐには倒れることはない客が選ばれ、より慎重に与信枠を設定され、モニターされることになる。その結果、年収1/3以内の客とさほど悪くないパフォーマンスとなる。

 行政監督機関を含め、与信業務を専業としない者の誤解と錯覚はあるだろう。立法するにあたり、業者が十分な説明ができなければ、公序は、誤解と錯覚と幻想のもとで、策定されることになる。

年収の1/3を超える借り手の借入れ不能に陥るのが7割の嘘 [貸金債権]

通常、業務のなかで負債の年収比率を計算するに使われる負債の額は、利息制限法適用金利での元本引きなおし計算前の「みなし」弁済有効としたときの「みなし」元本残高。
いったん過払い金がでても、それを打ち消すほどに、年収の半分以上にまで借金を借り増して、額の膨れ上がった債務者ほど、引き直ししてしまえば、残高は減額される。年収1/3まで借入れ余裕額が生まれる。

引きなおし請求して元本を調整しただけで、金利や元本支払いに関してはそのままで契約変更をしない場合に、契約見直しと扱われるかどうか。
それは別にして、総量規制施行後は、貸し付けできる顧客が限られるから、返済できる能力があれば、貸す業者は現れることだろう。
債務予備軍はこうして、いったん残高を減少させて、年収1/3に到達するまで借りつづけられる。
急増が予定される引きなおし計算。弁護士や司法書士を入れないで、交渉ができないか。

NTTデータから2割が借入れ不能というのであれば、元本額引きなおしの債務整理の予備軍は150~200万人に達するのか。


http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/091224/index.html
http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/091224/index2.html#02-1
http://www.garbagenews.net/archives/1194892.html

個人破産者予備軍急増たって-- 的外れな認識不足の亀井大臣答弁 [貸金債権]

亀井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見での大臣の発言から
(平成21年12月25日(金)11:04~11:33 場所:金融庁大臣室)
http://www.fsa.go.jp/common/conference/minister/2009b/20091225-2.html


質問に対する意味を理解していないのか、大臣の回答がなんとも、的をはずしている。

記者質問  「....個人も自己破産が増えるのではないか」という話もありますけれども、この問題は、来年の前半で非常に問題になると思うのですが、大臣のお考えとしては、現状でどのようなご認識でお考えになっているのでしょうか。」

回答 「そこの経営がおかしくなったら、三井住友にしても三菱にしても、そういう資金供給しているところがまず面倒を見てあげると。」

すると質問がそれて、「 もう既に、今の状況のまま過払いが続くと、メガバンクもそれを投げ出してしまうというような…。」

回答 「というよりも、自分たちがそれを使って荒稼ぎしておいて、一般の融資ではあまり利幅がとれないから、そういうところにやらせて、稼ぐときは稼いでおいて、要らなくなったら捨ててしまうという、「自分の会社だから自分が自由にするのは勝手だ」ということかもしれないけれども、何度も言っているように、日本の金融機関というのは、いろいろな意味で社会的責任というものをしっかりと考えなければ駄目ですよね。だから、そういう消費者金融との関係でも、そうした社会的責任というのを、やはりそういう覚悟がないのに手を出してはいけませんよ、逆に言うと。覚悟がないといけませんよ。ある意味ではリスクが高いのですから。」

最初の破産予備軍急増に関しては、意識だにされていない大臣認識ということが明らかにされたインタビュー。

「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第一回事務局会議  [貸金債権]

何で今になって、貸金業制度の見直しなのか?
見直しの必要があるかどうかの検討だって?

それにしても、第一回会議では、それぞれが言いたいことしか、発言していないような目的の見えない不毛な会議だこと。
そこに出てきたNTTデータのアンケート調査の結果報告。
http://forconsumers.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31-3 「個人破産者60万人? ..」
どう使われるのか。これが実態だとして、方向付けにされるのか。


http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/gaiyou/20091130.html

総量規制導入後の将来の破産モデル像 [貸金債権]

<「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第一回事務局会議での日本司法書士会連合会の説明から>
破産者の平均収入は、月15万円以下が84%を占め、低所得層での破産が多いことを示している。また、破産者の多くは賃貸住宅居住者となっており、収入が少ない中、家賃などの支払いが大きな負担となっていると推測される。
破産者の平均借入件数は約10社であり、10社までの借入で破産するケースが約73%となっている。また、破産者の平均負債額は約684万円となっている。この値は住宅ローンを含む額であり、実際には400万円以下の負債で破産に至る人が62%と過半数以上を占めている。

司法書士の示す破産者モデル像と、NTTデータの予想する60万件の破産像にはずれがある。
司法書士の月収15万円程度で、借入れ件数10件に対して、NTTデータの示す今後の債務者は、年収1/3超過の破産予備軍。
これから起こる破産劇は、全く様相が違うのだろう。
  
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/gaiyou/20091130.html

破産の基準点と総量規制--亀井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見 [貸金債権]

急増が予定される個人破産に関して政府の主張する銀行責任: 
亀井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要
(平成21年12月25日(金)11:04~11:33 場所:金融庁大臣室)

政府は、今後の総量規制の影響で60万件の個人破産申立が予期されることについて、銀行に責任を取らせるという。
具体的にはどういう意味なのか?

アイフルに銀行責任をかぶせられないように、プロミス、アコムに、法的な手段で銀行責任を問うことは困難だろう。どういう責任法理が許されるというのか。住専の親会社責任と同じ法理というが、貸金業者の単なる株主である場合と、完全に指揮権を行使していた住専とは違うだろう。最近では、それら貸金業者に役員を派遣していることは確かだが。

唯一ありえる責任追及の具体的意味が、破産申立防止であるとしたら...
破産申立て予備軍である年収1/3を超える多重債務者に、親銀行が年収1/3になるまで返済資金を貸し付けるという方法とありえる。銀行貸付は総量貸付対象外である。
すなわち、起こりえる現象として、債務整理することなく、銀行貸付により、消費者金融債権が返済される。
その場合には、その分、金利引きなおしによる元本の減額が増え、その後に債務整理するときには、残高の目減りが大きくなる。

たとえば、年収350万円で、借入総額250万円の場合、借り入れ総額が117万円になるまで返済する義務が生じるが、133万円を銀行が融資し、返済されることになる。
返済の方法によって、全部にそれぞれ元本返済を進めるのではなく、一社だけに残高を残せば、(後に債務整理となれば、)その返済で相当な額の過払い金も発生しうることになる。

親銀行の三菱銀行と住友銀行は、プロミスとアコムの客しか対応する義務がない。
しかし客は、複数の消費者金融から借り受ける。
2社の貸金の客が銀行から返済資金を借入れるとき、客が生存の期待されて、借入が続けられるプロミスとアコムに返済するのではなく、借入れ額の維持が期待できないで返済だけになるだろう武富士とアイフルに対して、返済を多くすることもかんがえられる。
それとも武富士とアイフルが危機になり、過払い金の回収が難しいと考えれば、アコム、プロミスに返済を増やすか。

債務者の行動が大きな影響を及ぼすことになるだろう。

しかし、年収の1/3規制を引いて、借入れ不能を理由に破産原因が発生するとしたら、その数値が破産原因のメルクマールになる。これまでは、借金が許されたことから、この程度のステージの借金額で、同時廃止破産が認められることはなかっただろう。
借入れできず支払い不能になるのだから、テスト基準点がかわる。事実上、破産事実の認定方法に影響を与える結果になる。

アメリカの2005年個人消費者破産法は、再生計画について、収入に対する支払額を計算根拠にするが、借金の金額とは、誰が無責任に考えた理屈だろうか。しかしそれが破産事件を左右する基準になっていく。

http://www.fsa.go.jp/common/conference/minister/2009b/20091225-2.html

個人破産者60万人? 年収300万円で、その1/3の負債で同時廃止が認められるとでもいうのか [貸金債権]

貸付の総量規制が施行されたら、個人の破産申立が60万件に (NTTデータ、貸金業界)
債務整理は150万件? 

2年前に調査を怠らなければわかっていたことを、今頃になってから、規制の見直し策のために調査するのだろうか。
立法に先駆けて、実情を調査するべきところ、遅すぎる。
立法提案者、提案検討貸金業懇談会メンバー、立法機関は、法制定するにあたり、所得と借入額のデータを見れば、年収の1/3規制が実施されたら借入れ不能になる債務者数は、どれだけがいるかは、少々調査すればわかったことで、プロの立法者の注意義務からして、知りえなかったとは言い逃れの許せない、当然に知っていたと推定されてしかるべきだろう。
知らないとすれば、現実を認めたくないから事前調査をしなかっただけのこと。
実態調査は、法を推進した自民党もしなかった。
後藤田議員は、金融庁の研究会に出席しても、経済学者も、影響に関する裏づけデータに関して、質問さえしていなかった。  当時の利用者の何割が年収の30%未満、30~40%、~50%、~60%、~70%、70%超といった程度の数字さえ、懇談会では把握していなかった
だから何で今更と感じることになる。

そうした注意義務違反を理由として、60万人の破産者、利用者の2割の150万人の債務整理がでるとしたときの社会経済的混乱を招く責任を問う声はあるのか。

しかし破産60万人の推定。どういう根拠か。
借入れできるだけ借入れ、多重債務で破産しか打つ手のなかった従来の破産基準と比べ、そんな軽い債務レベルで、破産申請して、同時廃止を認められていいのか。
これまでとはまるで変わった債務処理世界になってしまうのか・

家族構成や、生活必要費用によってさまざまだから、単一モデル化はできないが、年収360万円のサラリーマンでだったら、150万円の借金があって、債務の全額カットは認められるか。一部カットで民事再生が選択されるにしろ、管財人が入ることになれば、20万円の費用が負担となる。

60万人の推定は、年収300万円未満で、生活費で終わってしまうケースを意味するのだろうか。
生活費用にもよるが、サラリーマンで、年収の半分程度の債務があるからといって、同時廃止破産が認められないだろうから、わざわざ破産によるのではなく、他の方法を考えることになるだろうか。
いずれにしても、元本を返さないで、借りれるだけ借りて破産するのではなく、借入れできずに、小さな借金額でも破産が起こりえる社会になるのだろう。ステージ4で死刑宣告が、ステージ2での死刑宣告になれば、人数は膨大になる。

NTTデータの弱点は、業者と債務者のアンケート調査にすぎないこと。
業者はローン申請のときに、年収情報を入手するといっても、客の自己申告。
アンケートでは、年収証明を出せる(客観的状況と意思のある)債務者は、35%とのこと。残りはは、出せないか、借りる意味がないという。多くが所得証明をとると、嘘っぱちということか。確かに武富士のデータでは、半分が国保。自己申告では嘘もまかり通る。
居酒屋バイトで、実は年収180万円が、申告250万円はざらにあることなんだろう。これでは年収証明など出しようがない。
だから75%が融資を受け続けられず、返済一方になる。
この調査よりも、実態は更に怖い状況ということだ。

60万人推計の弱点は、個々の業者では、借入れ全額について、利息制限法適用金利での元本引きなおし計算ができないので、引きなおし前の借入れ額を基準にしていることだ。一斉に引き直ししてしまったとき、どれだけが年収1/3を超えるだろうか引きなおし前であれば貸付できないが、引きなおし後であれば、借入れに余裕があるのであれば、「みなし」弁済有効の「みなし」元本で調査するだけでは意味がなく、そうした実態の調査をしなければ、規制施行のインパクトを合理的に予測することはできない。
(そういう点では、調査は容易ではなかったので、立法担当者、起草担当者の注意義務を課すのはいきすぎだとの主張は、そもそもみなし元本ベースですら、調査を怠ったのだから、正当な言い訳にはならないだろう。)
客全体の2/3が超えるのではなく、1/3が超えるとすれば、この推計のベースは意味なく崩れる。破産申立するにしても、裁判所を利用しない債務整理にとどまるにしても、引きなおし後での年収1/3超の客数の推計はどこにもない。

法の起草者は、それを予期できたうえで、サラ金業者撲滅を優先する社会政策であったはず。
貧乏人は借入れしないで、キャベツでも食べていればいいとは、金融庁参事官のコメントという。
政府が個人の借入れを制御する意思が現れた法律。破産による社会的な富の喪失だとすれば、破産するにしても、債務の額は軽いほうがよい。
経済的混乱が大きすぎる、セーフティネットができていないからといって、今さら、年収1/3を超える借入れを一時的に猶予する方針変更とはおもえないが。

NTTデータにこれだけの調査結果を発表させるためには、業界の協力をとりつける強制力が必要だったろう。
現在の業界で未だに元気な大手でAとPには、業界をまとめ、調査を実施し、結果を出させるだけの力があるか
とすれば、プロジェクト・チームを指揮する金融庁の後ろ盾があっての調査と公表ということになる。
なぜ今になって、このデータを公認データとして公表させたのか。


http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/091224/index.html
http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/091224/index2.html#02-1
http://www.garbagenews.net/archives/1194892.html
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/11/60_2.html
http://www.garbagenews.net/archives/1143863.html
http://prw.kyodonews.jp/open/release.do?r=200911206236
http://www.47news.jp/topics/prwire/2009/11/136233.html
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