過払い利息返還請求の信用情報から削除 [信用情報]

過払い利息返還請求の信用情報から削除は違法な監督機関の権限行使か

金融庁の信用情報に関する一般的理解には、信用業務の常識的理解を欠いている。
過払い金履歴情報共有を実質的に禁じる理由として、「信用情報とは支払い能力に関する情報であり、返還請求の有無は信用情報にはあたらない」と述べている。
信用情報ということばを使えば、一般的に以下の情報が含まれる。
債務者の一般的な情報として、住所、性別、年齢、配偶者の有無、扶養家族・子供有無、勤務先、勤務年数、住居形態、住居年数、社保・国保の保険の種別など。
借入れに関する情報として、負債総額、借入社数、取引履歴年数、与信枠の未利用額、過去半年、1年、2年間それぞれの短期延滞頻度、30日以上の延滞頻度。
住所が信用情報ではないだろうという異論があるかもしれないが、住居形態が賃貸の場合には、家族構成の人数と共に賃料相場の点で関連する。
これらの情報は、クレジット・スコアリングの開発において、通常考慮される情報であり、信用判断に不要な情報とはみなされない。どのクレジット・スコアリングの一般的なテキスト、開発モデルの説明書、与信判断の情報を参考にされれば、容易にわかる。

ここで年齢、勤務年数、住居年数、取引履歴年数などの期間に関連する要因があるが、どれも期間の長さが信用判断に有利に働く。年齢が高ければ、勤務年数が長くなり、居住年数も長くなり、取引履歴も長くなるので、相関の高いファクターが与信判断に組み込まれることになるので、加重の調整が必要になる。

規制監督機関には、民間金融機関が何が与信判断の因子となるかを決定することに介入する権限があるのか。
公序に反しない限り、本人の同意があれば、何を使って与信判断しようが、何が返済能力に関係するかを決定するかは、貸し手の認められた自由ではないのか。

ここで注意が必要な点は、加盟員間の任意の自主的な非営利の信用情報の交換であり、その加盟員間での流通に国の介入が許されるとしたら、公共の政策上、あるいは法的根拠が必要になるだろう。

2点めとして、信用情報の交換について、個人情報保護法の適用を受ける、債務者個人から利用に関して事前の了解を得ていなければ、不正あるいは違法な利用となる。加盟員間での信用情報機関において、ローン申請において包括承諾を得ているから、違法性がない。
本人が利用を認めているのを、国家機関が法的根拠なく、閉鎖された任意団体の利用について禁ずることが許されるか。

過払い金履歴は、借入れ債務に関する情報になる。
過払い金請求が、みなし弁済無効の主張と過払い金の返還事実が「契約見直し」にはあたらない(金利について、利息制限法超過支払いは無効なので、契約を見直してはいない)と主張するのであれば、信用情報機関に対し、誤情報として、修正請求を認められる。
この主張を集団的に認め、その情報の利用を禁じる判断ということになるのか。
それでは、「過払い金請求事実」「みなし弁済無効の主張者」という用語法ではどうか。
「みなし弁済無効の主張者」という事実を否定はできないから、情報交換は許されるのか。

信用情報機関ではなく、仮に5社が(債務者の利用の承諾をとって)任意に過払い金履歴情報を交換をする場合、それを禁じ、処罰する法的根拠があるのだろうか。


NEWS: 過払い利息返還請求:信用情報から削除、金融庁方針 業者「リスク判断に支障」

 金融庁は14日、貸金業者が貸し出しの判断基準として使用している信用情報から、借り手が「過払い利息」を返還請求した履歴を削除させる方針を明らかにした。返還請求の履歴がある借り手は履歴の削除で新規融資は受けやすくなりそうだ。
 貸金業者系の「日本信用情報機構(JICC)」の場合、過払い利息返還請求の情報を119万4000人分登録(09年9月末現在)。貸金業者が新規融資の際、判断材料に使っている。消費者団体や弁護士からは「請求履歴が残っていると新規融資が受けにくくなる」と削除を求める声が強まっていた。
 貸金業界からは「過払い利息返還請求の履歴がある人は返済できないリスクが高い。削除すると正確な与信判断ができない」と反発しているが、金融庁は「信用情報とは支払い能力に関する情報であり、返還請求の有無は信用情報にはあたらない」として、JICCに履歴の登録、提供の停止をさせることを決めた。
 金融庁は今年6月に全面施行される改正貸金業法で、貸金業者に対し、金融庁が新たに指定する「指定信用情報機関」に、借り手の債務状況などの登録を義務づけるが、過払い利息の返還請求の履歴は登録させない方針だ。JICCも、信用情報機関としての指定を申請している。ただ、履歴の削除で過払い利息返還請求が急増する可能性があるため、貸金業者からは「経営が圧迫される」との声が上がっている。【井出晋平】
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100115ddm041040177000c.html



コメント概要と金融庁の考え方
http://www.fsa.go.jp/news/20/kinyu/20090617-3/01.pdf
Ⅰ.指定信用情報機関の指定・監督に当たっての評価項目
Ⅰ-3 業務規程関係

5 収集・提供する信用情報には、完済後に過払い金の返還請求を行った旨の情報は含まれないということを明確にすべきである。また、返済能力に問題がなく約定返済中であったとしても、過払い金返還請求をしたことについては、同様に、信用情報に含まれないことを明記すべきである。

6 過払い金は貸金業者が自主的に返還すべきものであるから、信用情報機関に載せる情報ではない。

7 過払い請求の事実や債務者が過払請求に応じたことなどを独自の信用情報として収集・提供しないこと。

8  株式会社日本信用情報機構のホームページに、「「与信を補足するための情報※3」項目に契約見直し※債務者から過払金返還の請求があり、会員がそれに応じたもの」とあるが、法定利息内での引きなおしで、最高裁でも判例の出ている行動に対しては、通常の完済と同様の対応をすべきではないか。

9 現在、信用情報機関の中には、過払い請求について、「契約見直し」などといった情報として収集・提供している実態がある。このような情報提供を禁止すると明記すべきと考える。「資金需要者等に対しても、客観的かつ合理的に説明できるものでなければならない」という観点からいくと、過払い請求については、客観的にいって返済能力とは無関係であり、いかなる名目をもってしても、情報収集提供すべきものではないと考える。

10 過払い金返還請求及び過払いになっている債務者の債務整理開始は、事故扱いしないこと。

11 指定信用情報機関が保持してはいけない情報として、「過払金の返還を受けたことが分かる事実」を規定すべき。

12 過払金返還請求をした事実が、信用情報として登録されないようにしていただきたい。過払金請求の事実がブラック情報として扱われ、借入れができなくなることを恐れ、正当な権利行使である過払金の請求を断念する借主がいる。

13 現行の「契約見直し」登録は廃止し、すでにある登録は削除していただきたい。

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本事務ガイドラインⅠ-3-2-3(1)において、指定信用情報機関が収集・提供する情報について、「信用情報として取り扱うことについて、資金需要者等に対しても客観的かつ合理的に説明可能なものでなければならない」と規定しております。
過払い金返還に係る情報を信用情報として取り扱うことについて、資金需要者等に対しても客観的かつ合理的に説明可能であるか、まずは、指定申請を予定する信用情報機関において、十分検討して頂く必要があると考えます。
なお、現在、過払い金返還に係る情報を登録している信用情報機関では、完済後になされた過払い金の返還については登録していないと承知しています。

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14 指定信用情報機関が収集・提供する信用情報については、業務規程において限定列挙するものとし、その定義、情報提供時期、登録期間などを具体的・一義的なものとするとともに、信用情報と直接関係のない情報を指定信用情報機関が収集することを禁止するべきではないか。
 
 ***
指定信用情報機関が信用情報提供等業務において、収集・提供する情報の範囲については、本事務ガイドラインⅠ-3-2-3(1)に規定しております。
また、指定信用情報機関が信用情報提供等業務において収集・提供する情報は、業務規程に定められ、金融庁長官の認可を受ける必要があり、指定信用情報機関が業務規程を変更する場合においても、金融庁長官の認可が必要となります。

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15 個人信用情報に誤りがあった場合に、本人から信用情報機関に対し、容易かつ迅速な訂正や削除の手続きを保証すること。また、信用情報機関が本人から異議申立てを受けた場合には、信用情報機関に対して迅速で誠実な対応を義務付けること。
 
***
本事務ガイドラインⅠ-3-4(3)において、個人情報保護法第26条の規定に基づく訂正等を適正
かつ確実に行うための態勢整備について規定しています。

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16 資金需要者等が債務整理を弁護士又は司法書士に依頼したとの内容の事故情報も、Ⅰ-3-2-3(1)①②に含まれると考えられるが、その後、利息制限法の制限利率を超えて金銭消費貸借取引を行っていたために過払いが生じていたことが判明した場合には、本人或は代理人の申出により削除できるようにすべき。

17 一度約定で残債の支払を一時停止して、「元本又は利息の支払の遅延の有無」の情報が登録されたとしても、利息制限法制限利率に基づく引きなおし計算によれば過払いとなる場合には、債務者本人又は代理人の申請により、同情報が抹消可能であることが含まれる旨の規定を設けるべき。

18 債務整理開始後に過払い金が発生していることが判明した場合、「弁護士介入」「延滞」登録から、単純に「完済」に登録変更すべき。

19 「延滞」後の過払金の請求では、延滞登録から、「完済」登録に変更する扱いとしていただきたい。

20 過払い金返還請求を理由に債務者が支払をしていない場合や契約上の抗弁を主張した結果、支払が停止されているものなどについては、「延滞」とは明確に区別した情報として収集・提供することとし、「延滞」に含まれない旨も規定すること。例えば、利息制限法によると債務不存在が明らかな場合は、単に「完済」とし、抗弁主張がある場合「抗弁」などとして別の信用情報として収集・提供すること。
  
***
ご指摘は、運用の詳細に関するものであり、今後の監督において、貴重なご意見として参考にさせて頂きます。
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